【解説】多くの女性ファンも獲得した「機動戦士ガンダムSEED」 キャラ、ドラマの魅力

 人気アニメ「機動戦士ガンダムSEED」シリーズの完全新作となる劇場作品「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」が2024年1月26日に公開される。「SEED」は、2002~2003年に放送され、“21世紀のファーストガンダム”とも呼ばれているほど人気を集めた。これまでの「ガンダム」シリーズのファンに加え、多くの女性層を含む新規ファンを獲得したとされている。なぜ、「SEED」は新規ファンを獲得できたのか? その理由の一つに、キラ・ヤマト、アスラン・ザラなどのキャラクターの魅力がある。キラ、アスランを中心に「SEED」のキャラクターの魅力を解説する。

 ◇女性人気は「SEED」だけではない

 「SEED」は、多くの女性層を獲得したとされているが、「ガンダム」シリーズにはそれまで女性ファンがいなかったわけではない。1979~80年放送のシリーズ第1作「機動戦士ガンダム」でもシャア・アズナブルやガルマ・ザビなどの美形キャラが女性に人気だったし、1995~96年放送の「新機動戦記ガンダムW」など女性に人気の作品もあった。

 「ガンダム」シリーズと言えば男性ファンのイメージもあるかもしれないが、「SEED」以前にも女性ファンも多かった。ただ「SEED」はそれまで以上に女性ファンを多く獲得した作品と言われている。「SEED」は当時のアニメとしては高視聴率を記録し、女性ファンを含む幅広い層の支持を集めた。

 ◇大胆かつ繊細 キャラデザの魅力

 「SEED」のキャラクターデザインを手掛けたのは平井久司(ひらいひさし)氏だ。平井さんのデザインは「大胆かつ繊細」と評されることもある。中性的な顔立ちなどが特徴で、美形キャラクターが女性ファンの心をつかんだようだ。

 ◇社会の空気を反映

 遺伝子調整された“コーディネイター”の主人公・キラは、学生だったが戦禍に巻き込まれてストライクガンダムのパイロットになる。友人たちを守るために戦うことになるが、それは本来、同胞であるコーディネイターたちとの望まぬ戦いでもあった。親友だったアスランと戦場で再会して戦うことになるなど苦難の道を歩く。やがて、戦争を止めるために決意することになる。

 アスランもまた、親友と戦うことになって苦悩する。エリート軍人のアスランは責任感が強く、軍人として敵と戦うが、親友との戦いに葛藤する。キラと決別するものの、お互いの思いが同じだったことを知り、憎しみの連鎖を断ち切ろうとするキラの思いに応える。

 キラとアスランは戦争に巻き込まれ、悩みながら、自分が信じた道を進もうとする。その姿が同世代の視聴者の共感を呼んだようだ。

 福田己津央(ふくだみつお)監督は、2001年の同時多発テロ事件の影響があったことを明かしている。アフガニスタンに侵攻する米軍の中にイスラム教徒の兵士がいたことを知り、そこからキラの立場、ストーリーに着想を得たところもあったといい、この作品は放送当時の社会の空気が反映されているところもある。

 新人類であるコーディネイターと遺伝子調整されていないナチュラルの二項対立を描いてはいるが、単純なものでもない。人間の差別意識、社会の矛盾など普遍的な問題を描いているところも大きな魅力となっている。