「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の芥見下々(あくたみ・げげ)さんのマンガが原作のテレビアニメ「呪術廻戦」の第2期。呪術師、呪詛師、呪霊が渋谷に集結し、かつてない大規模戦闘を繰り広げる「渋谷事変」が描かれ、迫力のバトルシーン、声優陣の熱演も話題になっている。10月26日にMBS・TBS系で放送された第38話(第2期・第14話)「揺蕩」では、一級呪術師の七海建人、呪術高専2年生の禪院真希、真希の叔父で禪院家の当主の特別1級呪術師・禪院直毘人(なおびと)の3人と、特級呪霊・陀艮(だごん)がし烈な戦いを繰り広げ、ラストでは伏黒甚爾(とうじ)が登場するという衝撃的な展開が描かれた。11月2日放送の第39話(第2期・第15話)「揺蕩-弐-」に向けて、禪院真希役の小松未可子さん、七海建人役の津田健次郎さん、禪院直毘人役の中田譲治さんに収録の裏側を聞いた。
◇3人そろっても苦戦する 陀艮とのしんどい戦い
--第38、39話では、特級呪霊・陀艮を前に真希、七海、直毘人が共闘することになります。
津田:陀艮戦に関しては、3人が共闘しても苦戦しまくるのが、やっぱり衝撃的ですよね。めちゃくちゃ強いなと。アフレコをやっていても、かなりしんどい戦いを繰り広げているなと感じましたね。
中田:第38話では「1級が2人も揃(そろ)って祓(はら)えんとは由々しき事態だな」(直毘人のせりふ)とね。
小松:そうですね。ぐうの音も出ない。
津田:本当にそうですね。その前のシーン(第36話)で七海が釘崎(野薔薇)に「これからの戦いは1級(わたし)で最低レベルです」「足手まとい。邪魔です。ここで待機を」と言っているんですけど、本当そうだなって。七海でもギリギリで、それでも戦えていない感じがすごくするので、本当にしんどいなと思いながらやっていました。
小松:実際太刀打ちできないという現実を突きつけられた時のジレンマとの戦いというか。真希は常に強がってはいるんですけど、ぶっちゃけどうにもできなかったよね、という(苦笑)。どうにか戦い方を探すのですが、それ以前の問題というか。それくらい本当に恐ろしく強い呪霊たちが集ってしまっている。ただ、ナナミン、真希、直毘人というこのチームは、こういう戦いがなければ集うことはなかっただろうなと。
津田:確かに。この3人は、最初はすごく違和感があるんですよね(笑い)。どういう距離感なんだろうって。
小松:不思議な距離感ですよね。
中田:ナナミンは、直毘人を見て困惑していましたね。
津田:はい(笑い)。直毘人と会ったことはあるんでしょうけど、しゃべったことがないような。しかも、戦いのさなかで酒を飲んでいるし(笑い)。
小松:ナナミンは引いていましたよね。この3人は、戦いでやっと会話できる感じ。多分、普通だったらお互いに何も通じ合えないというか(笑い)。
--中田さんが演じる直毘人は、第1期で描かれた真希の回想シーンに登場していますが、「渋谷事変」で本格的に登場することになりました。
中田:第1期では少しだけ登場して、真希との関係を暗示していただけでしたから、今回はしっかりとした見せ場もあるので、やっぱり気合は入っていました。本当は、五条悟の封印を解いてやりたくないくらい、五条家と禪院家は仲が悪いと思うのですが、このままでは人類が終わってしまうという危機感が彼なりにあって、渋々腰を上げてきたというか。自分では祓えると思ってこの場に来ているのでしょうけど、想像以上に敵が強いという。
◇変態した陀艮にショック! 「渋谷事変」のすさまじい緊張感
--陀艮戦の収録の様子は?
津田:緊張感がすごくありました。もちろん、直毘人さんはマイペースなんですけど、その中の緊張感と言いますか。皆さんのせりふを聞きながら一緒に共闘できて、その緊張を共有できて楽しかったです。
小松:そうですね。陀艮も一緒に収録できたので。ちっちゃい陀艮から大きい陀艮になっちゃって。
--七海たちが対面した時の陀艮は呪胎でしたが、体が大きい状態に変態しました。
中田:あれはショックだった。
小松:あんなに可愛かったのに。
津田:声も急にガサガサになってね。
小松:(変態した陀艮に)ビリビリとしびれるくらいの怒声を浴びせられた時のあのピリッとした緊迫感。あそこでひとまとまりになれた気がしますね。
中田:確かに。恐らく移動中は口もきかないで、真希と直毘人も反発し合っていたと思うんですけど、小松さんが仰ったみたいに、敵と戦うことによって初めてチームワークが出てきたと思う。陀艮も一緒の収録だったので「陀艮は強いな」「3対1でギリギリだ」というのを感じながらやれたのがよかったなと。
小松:スタジオに入った瞬間から緊張感がありましたからね。
津田:「渋谷事変」はずっとそんな感じなので。
--収録が終わった後は思わず「はあ……」と息をつくような?
中田:いや、まだ余力は残っていますね。
小松:まだ戦える(笑い)。
--第38話では、戦いで右腕を失った直毘人が「たかが右腕一本、さりとて71年物 高くつくぞ」と言い放つシーンも印象的でした。
津田:格好よかったですね、「71年物」。あのせりふは名ぜりふ。ご一緒できてよかったなと思います。
小松:言い回しが格好いいですよね。
中田:多分、原作ファンの方は直毘人のあのせりふが聞きたかったという方が多いと思うので、僕としてはプレッシャーもありました。ただ、その前に皆さんと合流して会話する時間が持てたので、個人的にはよかったかなと。あとは、アクションシーンのテンポが速いんですけれど、七海も直毘人もきっと戦っている時に声を出さないタイプだと思うんですよね。その代わりに榊原良子さんのナレーションが入って、直毘人の術式を説明してくれて。格好いい仕上がりになったんじゃないかと。
◇みんなを救った伏黒恵に「申し訳ない」
--陀艮戦の見どころは?
津田:七海的には、とても責任感が強く、いろいろなものを背負って戦うタイプだと思うので、すごく頑張っていると思います。伏黒(恵)くんに助けられる場面もあって、本当に申し訳ないなと思っていました。
--陀艮が領域展開しているところに伏黒が現れ、窮地を救う場面が描かれました。
津田:本当に申し訳ない。だって、我々は3人そろって何をしているんだと。彼が生命線になっているのが本当にふがいないというか。
--伏黒の案で領域から脱出するため、七海が「集合!!」と真希と直毘人を呼び寄せるシーンもかなり緊張感がありました。
小松:あの時の今まで聞いたことのないような「集合!!」というナナミンの大きな声が、すごく逼迫(ひっぱく)しているなという感じがあって。
津田:あのあたりのシーンは「やばい!」と思っていました。七海的には自分の命がどうこうなることよりも、この状況をどうしようとか、人間界がやばいとか、そっちの方に意識が向いているとは思うんですけど、それでも本当にまずい!という。
小松:そうですね。そもそも絶望感がすごい中で、さらにえたいの知れない人間が入ってきて、えー!って。
--陀艮の領域にまさかの伏黒甚爾が入ってくるという。
津田:あれはね、大混乱だよね。
小松:しかも、(甚爾は)呪力がないのに自分より強い。同じく呪力がない真希は、フィジカルの強さに関しては自信があったのにそれすら……という。第38、39話の真希は、立ち向かえないというもどかしさが一番強かった気がします。そんな中でも、恵が来てくれた時に救われたというか。恵に対して「オマエって奴は本当に、クソ生意気な後輩だよ……!!」と、ようやく真希らしい言葉が吐けたなと。真希が士気を取り戻した感覚がありましたね。
◇中田譲治も憧れる七海の大人の格好良さ 「渋谷事変」はさらに魂を削る戦いへ
--真希、七海、直毘人は「渋谷事変」という大きな戦いがなければ集わなかったであろう3人です。それぞれの魅力、印象は?
津田:直毘人に関しては、ヘラヘラしている感じの格好よさがすごくある。余裕の格好よさというか。それこそ腕を持ってかれても減らず口をたたく感じというのは、やはり強い人ならでは。精神的にもものすごく強い。達人の持つ格好よさみたいなのがあふれていて、ボロボロになっても格好いい人は格好いいんだって、すごく思いました。真希に関しては、この戦いの中で、一番苦しかったんじゃないかなという気がするんですよね。真希はほとんど戦えていないから……見ていてつらくて。元々プライドが高いほうなので、それがへし折られている感じがあって。
小松:へし折られまくりましたね。私は「呪術廻戦」に出てくるキャラクターは、歳を重ねるごとにめちゃくちゃ格好いい、しびれるなと思っていて。それで言うと、直毘人は強さと人生観が尋常じゃないので、圧倒的だなと思いましたし、ちょっと憧れちゃいますよね。ナナミンに関しては、乱暴な物言いをする真希でも「七海さん」と呼んでいて、丁寧だなと。五条悟は「悟」と親しみを込めて乱暴に呼んでいるんですけど、ナナミンは「七海さん」と。
津田:距離感あるよね(笑い)。お互いそんな感じだったね。
小松:そうですね。ナナミンは、本当にやばいという状況でも真希に「気をつけてください」とアドバイスをくれて、普段接しないからこそ、改めて見えた一面があったなと思います。
中田:やはり僕らの年代から見ると、リアリストとして全てを俯瞰(ふかん)して見ているナナミンは格好よかったですよね。前のエピソードで釘崎を助けて、敵(重面春太)をズタボロにして、情を切り捨てて冷酷にやりきる大人の対応みたいなところは、やっぱりいいなと。それでも、真希を見捨てない情がある部分もあって、それもまた大人だなと。実力があって、こんなふうに余裕が持てたらいいなと思わせてくれるキャラですよね。
--中田さんから見た真希の印象は?
中田:真希に関しては、直毘人自身が真希のことが憎くて家から追い出したのか、真希のことを考えて送り出したのかが、描かれていないので、謎のままなんですよね。でも、今回なぜ真希と直毘人が同じ班になったんだろう?と思うんです。
小松:本当にそうですよね。
中田:直毘人は、真希たちが危ない時に命を助けたりもしているので、うがった見方をすれば、「じゃあ、真希のところでやるか」みたいなところもあったのかな?と。班分けをした人に聞いてみたいです。
--最後に「渋谷事変」の今後の見どころを教えてください。
津田:ここからは、緊張感もさらに増していきますし、しんどい時間もどんどん増えていきます。視聴者の皆様にも我慢を強いる作品だとは思うのですが、その分、見てくださる皆さんと一緒に作り上げていくみたいな感じも出てくるのかなと。本当に1話たりとも、1秒たりとも、一瞬たりとも逃さず、ぜひ楽しんでいただけたらなと思っております。
小松:やはりこの「渋谷事変」が「呪術廻戦」の核になっていく部分だと思います。渋谷で戦っているどのチームも見逃せない展開になっていると思いますし、それぞれの人生が懸かっている戦いなので、そういういろいろなものを懸けた戦いは、こんなにも魂を削るものなんだなと、ぜひ体感していただけたらうれしいなと思います。
中田:五条救出に向かって、みんなで感情移入しながら、見ていただきたいと思います。“ダンジョン”の難易度はどんどん上がっていきますし、それぞれのダンジョンに見せ場があります。そういう意味では、視聴者も役者も突っ走りやすい物語だと思いますので、ぜひ楽しんでください。