“キンプリ”の愛称で親しまれてきた人気アニメ「KING OF PRISM」シリーズの4年ぶり劇場版最新作「KING OF PRISM -Dramatic PRISM.1-」が8月16日に公開される。“応援上映”などで長く愛されてきたシリーズの魅力をアニメコラムニストの小新井涼さんが解説する。
◇
アニメの「キンプリ」こと「KING OF PRISM」シリーズの最新作「KING OF PRISM -Dramatic PRISM.1-」が8月16日に公開を迎えます。本作が日本に応援上映文化を根付かせた2016年からおよそ8年、当時一度触れたことのある人の中には、「キンプリ!? 懐かしい!」という感想を抱く方もいるかもしれません。しかし実は本作は、初公開から8年が過ぎた今でも根強い人気を誇る“現行”の作品でもあります。
作品自体の魅力はもちろん大前提として、本作がこれだけ長い間、ずっと楽しまれ続けている背景には一体なにがあるのでしょうか。
大きなポイントとしては“消えなかった上映の灯”と、それによってじわじわと増え続けてきた“新たにハマってくれるファンの存在”の二つが考えられます。
「キンプリ」は2016年の1作目公開後、2017、2019、2020年、そして今年2024年と新作が劇場公開されてきました。そして実は、その間1度も上映が行われることがない年がなかった、つまり既に8年以上も上映が行われ続けていて、しかもその頻度も1年に1回どころではないという稀有な作品でもあります。今でこそ新作アニメ映画のアンコール上映は珍しくなく、「キンプリ」以外にも復活上映が頻繁に行われる作品も存在しますが、この8年強、新作公開がない年も毎月のようにどこかしらで上映が行われていた作品は他に見たことがありません。
本作がこれほど長く頻繁に上映されてきた背景には、「キンプリ」が、みんなが集まってみることでより盛り上がる応援上映と強く結びついた作品であることも関連していると思われます。テレビでの“放送”や映像ソフトの“再生”ではなく、上映であることにも大きな意味がある作品であったことで、映画館やプラットフォーム側も可能な限り、積極的に上映を続けてきてくれたのです。実際に、この8年間消えなかった上映の灯は、全国規模の上映はもちろん、札幌のサツゲキ(ディノスシネマズ札幌劇場)をはじめ、厚木のあつぎのえいがかんkikiや尼崎の塚口サンサン劇場、福岡のkino cinema天神といった各地の映画館が行う定期的な上映がなかったら実現していません。またコロナ禍以降は、そこにZoomやYouTubeといったオンラインプラットフォームでの応援上映等も加わってきました。
「キンプリ」の人気の話になると、熱心なファンや応援上映に目がいきがちですが、背景としては、ファンの熱意に応えてくれた劇場やプラットフォーム、配給側の動きも大きかったのです。今回の新作劇場版発表時に、前作公開から4年ということもあり「COME BACK」と言われた際、ファンが「え!いつの間にどこかに行ってたの!?(=ずっとそばにいると思ってた)」と反応したのも、こうして新作公開がない間も上映の灯が消えなかったためでしょう。
加えて、そうして上映が行われ続けてきた結果、実はここ数年で新たに「キンプリ」にハマってくれるファンの存在もじわじわと増え続けています。8年の間に、当時スピンオフ元の「プリティーリズム」を見ていた人たちが、時を経て「キンプリ」にハマったり、新作公開がない間の再上映時にハマった人が、今回初めて一緒に新作公開を迎えられると、今もまさに上映を心待ちにしていたりもするのです。
本シリーズは公式HPで「累計128万人の心をときめかせた大ヒット劇場アニメシリーズ」と紹介されています。つまりそれは、この地球上にはまだ「キンプリ」をみたことがない人類が70億人以上いる計算なので、今後も上映が続きファンの応援が続く限り、その中の何人かが新たに本作に触れて盛り上がりに加わってくれる可能性もあるのです。
そう考えると本作は、懐かしい作品どころかやはり現行ジャンル、それも実はまだまだ盛り上がりの伸びしろも満載な作品と言っても過言ではないかもしれません。
本作が長年楽しまれ続けてきた背景には、こうした“上映を続けてくれた興行・配給側”、その間にも“新しくハマって盛り上がりに加わってくれた人々”の存在があったと考えられます。加えて欠かせなかったのが、8年続く上映に度々足を運び、周りに薦めながら新たにハマってくれる人を常に迎え続けてきた根強い従来のファンの存在です。
もちろん中には、これだけ長い年月だけあって、ずっと「キンプリ」を好きでいながらも、普段は別の作品を追いかけたり、他の界隈に身を置いているという人も少なくありません。しかしそういった人たちも、ひとたび作品に新たな動きがあれば戻ってきて一緒に盛り上がらずにはいられない、まるで“地元の祭り”のような、一度ハマるとそうして自身の“殿堂入り”ポジションに位置付けられる不思議な魅力が「キンプリ」にはあるのです。
そうしてこの8年以上、日本のどこかで上映が行われ続け、常に楽しまれ続けてきた「KING OF PRISM」。実はまだ体験したことがないという人は、ぜひこの新作公開の機会に、人々を夢中にさせる本作の上映を実際に味わってみてください。
◇
こあらい・りょう=KDエンタテインメント所属、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約10年前から継続しつつ、学術的な観点からもアニメについて考察・研究し、大学や専門学校の教壇にも立つ。アニメコラムの連載をする傍ら、番組コメンテーターやアニメ情報の監修で番組制作にも参加している。